皆さんは「周術期等口腔機能管理(しゅうじゅつきとうこうくうきのうかんり)」をご存知ですか?とても難しい言葉が並んでいますが、簡単に言い換えると「手術の前後に歯科治療や口腔ケアなどを実施して予期せぬトラブルを防止する」取り組みです。
▼どんな人が必要となるの?
周術期等口腔機能管理は、全身のがんの手術、心臓血管外科手術,人工股関節置換手術、臓器移植手術、放射線療法、化学療法を受ける患者さんが対象となります。必ずしも外科手術だけに適応されるわけではありませんので、心当たりのある方は当院までお問い合わせください。
▼どんなことをするの?
周術期等口腔機能管理では、主に歯科医師や歯科衛生士による口腔ケアを行います。
手術前と手術後に、口腔衛生状態を良好に保つことで、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)や創部感染のリスクを低減できます。手術中に脱落のおそれがある歯は、あらかじめ抜いてしまうこともあります。ですから、周術期等口腔機能管理で必要となる処置は、患者さんによって異なりますが、目的は「外科手術・放射線療法・化学療法を安全に遂行する」という点で共通しています。
▼術後の誤嚥性肺炎に要注意!
近年、誤嚥性肺炎を発症される高齢の方が増加しています。それは歯周病になる高齢の方の数が増えていることとも関係しているのをご存知でしょうか?高齢の方は飲み込む力が衰えているため、唾液や食べ物を食道ではなく気道へと送り込む「誤嚥」を起こしやすいです。しかも高齢の方は免疫力も衰えていることから、感染症にもかかりやすくなっているのです。
お口の中で繁殖した歯周病菌が唾液とともに気道へと送られると、そこで感染して肺炎を引き起こします。これと同じメカニズムで、体力や免疫力の衰えたがん患者の方でも誤嚥性肺炎が多発しているのです。実際、術前・術後に適切な口腔ケアと歯科治療を行う周術期等口腔機能管理を実施することで、誤嚥性肺炎や手術創部感染、抗がん剤・放射線による口内炎の発生が大きく減少したという報告があります。
▼まとめ
今回は、周術期等口腔機能管理について解説しました。外科手術や放射線療法、化学療法の前後で必要となる口腔ケアや歯科治療で、術後の合併症を予防するのに役立ちます。これから大きな手術や放射線療法などを受ける予定の方は、全身の入り口である口腔の衛生状態に気を配ることが大切です。そんな周術期等口腔機能管理に関心のある方は、いつでもお気軽に当院までご相談ください。