進行した虫歯や外傷などで、歯の頭の部分である歯冠の大半を失うと、抜歯が第一選択となりやすいです。なぜなら歯冠部に十分な歯質がないと、土台を作って被せ物を装着できないからです。そのため通常は、歯を抜いた上でブリッジや入れ歯、インプラント治療へと移行することになります。そこで「エクストリュージョン」という専門性の高い術式を適応できれば、抜歯を回避して歯を残すことが可能な場合もあります。今回はそんなエクストリュージョンについてわかりやすく解説をします。
目次
エクストリュージョンとは?
エクストリュージョンとは、歯根挺出術(しこんていしゅつじゅつ)と呼ばれる治療法で、文字通り歯の根っこである歯根を矯正的に引き上げます。一般的な矯正治療は、歯を水平的に動かしますが、エクストリュージョンは垂直的に動かすことで、口腔内に露出している歯質の量を増やします。つまり、エクストリュージョンとは「部分矯正」の一種と言っても間違いではないのです。
エクストリュージョンを行う理由
エクストリュージョンを行う主な理由は、被せ物における「フェルール効果」を得るためです。フェルール効果とは、装着した被せ物の安定性を保証するもので、少なくとも歯茎から1mm以上は歯質が出ている必要があります。歯茎に埋まっている歯では、被せ物を装着しても安定性が悪くなりそうなのは、直感的にイメージできるかと思います。
エクストリュージョンのメリットとデメリット
エクストリュージョンを行うと、抜歯を回避して歯を保存することが可能となりますが、治療期間が長くなる、顎の骨に埋まっている歯根の面積が少なくなるため、健全な天然歯よりも寿命が短くなりやすいというデメリットを伴います。こうしたエクストリュージョンに伴うメリットとデメリットの両方を正しく理解した上で、治療法を選択することが大切です。
エクストリュージョンによる治療の流れ
エクストリュージョンによる治療は、以下の流れで進行します。
【STEP1】検査・診断
口腔内診査やレントゲン撮影、ケースによっては歯科用CTによる精密検査を行った上で、エクストリュージョンの適応症かどうか診断します。
【STEP2】歯根の挺出(エクストリュージョン)
歯根にフックを付けて、両隣の歯に装着したワイヤーを固定源にして挺出させます。歯根の挺出には数ヵ月程度を要するため、その間は矯正用のゴムの交換などを行いながら経過を見ていきます。
【STEP3】被せ物治療
歯根の挺出が完了したら、矯正装置を撤去して、被せ物治療を行います。土台を形成し、クラウンを装着します。
料金メニュー
※エクストリュージョンは、部分矯正の範囲内になります。
一歯3万×関与する歯の数=◯万円
例:3万×3本=9万円
まとめ
今回は、抜歯を回避して歯を残すことができるエクストリュージョンについて解説をしました。虫歯や外傷で歯冠部の歯質が少なくなったケースに適応される術式で、歯根を垂直的に引き上げる矯正処置が必要となりますが、かけがえのない天然歯を抜かずに保存し、適切な形で被せ物を装着できるというメリットが得られます。ただし、エクストリュージョンは専門性が極めて高い歯科処置なので、治療を任せる歯科医院選びは慎重に行う必要があります。