噛み合わせが深い状態を過蓋咬合(かがいこうごう)といいます。出っ歯や受け口、乱ぐい歯のような目立つ歯並びではありませんが、お口の健康に及ぼす影響はとても大きいため、放置はせずに歯列矯正で改善するのが望ましいです。今回はそんな過蓋咬合という歯並び・噛み合わせの異常について詳しく解説します。
過蓋咬合とは?
正常な歯並びでは、上の前歯が下の前歯を2~3mmくらい覆う形で噛み合います。この指標をオーバーバイトと呼びます。例えば、オーバーバイトが5~6mmある状態は過蓋咬合であり、上の前歯が下の前歯の大半を覆ってしまっていることから、さまざまな悪影響が生じます。ちなみに、オーバーバイトが0mmは上の前歯と下の前歯が先端で接する切端咬合となり、マイナスの値は開咬という診断名がつきます。
過蓋咬合を放置するデメリット
過蓋咬合を治療せずに放置していると、次のようなデメリットが生じます。
【デメリット1】奥歯の寿命が縮まる
過蓋咬合では、奥歯に大きな負担がかかります。その結果、奥歯がすり減る咬耗(こうもう)が進み、虫歯を発症しやすくなります。奥歯にダメージが蓄積して、歯根や歯冠が破折するリスクも高まることでしょう。
【デメリット2】顎関節症になりやすい
奥歯に大きな負担がかかると、そのしわ寄せはそしゃく機能の支点である顎関節にまで及びます。口を開けた時にカクカク鳴る、食べ物を噛んだ時に顎が痛い、口を大きく開けられないなどの症状が認められる場合は、顎関節症を発症しているかもしれません。
【デメリット3】前歯のダメージを受けやすい
過蓋咬合の症状によっては、噛む度に上下の前歯が接触したり、お互いを圧迫したりすることもあります。その結果、前歯が咬耗して知覚過敏を発症したり、前歯が欠けたりすることもあるため十分な注意が必要です。過蓋咬合による前歯同士の接触で、出っ歯になる患者さんもいらっしゃいます。
過蓋咬合を治す方法
過蓋咬合は、歯並びと噛み合わせの両方を適切な方法で矯正しなければ、その症状を改善することは難しいです。当然ですが過蓋咬合を自力で治すことは不可能ですので、噛み合わせが深い症状に悩まされている方は、歯医者さんの力を借りるようにしてください。過蓋咬合を大人になってから治す場合は、ワイヤー矯正やマウスピース型矯正といった治療の選択肢が用意されています。過蓋咬合は、歯の三次元的な移動が必要となる不正咬合なので、どちらかというとワイヤー矯正の方が適しています。子どもの過蓋咬合は、大人とは少し異なる方法で治すことになるため、まずは小児矯正に対応している歯医者さんに相談しましょう。
まとめ
今回は、噛み合わせが深い「過蓋咬合」の特徴や放置するデメリット、治療する方法などを解説しました。噛み合わせが深い状態は奥歯や顎関節に大きな負担がかかるだけでなく、前歯にもダメージが蓄積していきます。そのまま放置していると歯の寿命が縮まるため、できるだけ早期に歯列矯正を受けた方が良いとでしょう。