そもそも「口唇ヘルペス」とは?
口唇ヘルペスとは、単純ヘルペスウイルス(HSV-1)というウイルスに感染することによって、唇やその周囲に痛みを伴う水ぶくれができる病気です。
日本では非常にありふれた感染症で、20代〜30代の約半数、60代以上ではほとんどの人がこのウイルスに感染していると言われています。しかし、ウイルスを持っていても症状が出ない人もいれば、頻繁に再発を繰り返す人もいます。
口唇ヘルペスの典型的な症状サイクル
症状は通常、以下のような4つの段階を経て進行します。
第1段階:前駆期(ピリピリ・チクチク)
水ぶくれができる半日〜1日前に、唇の一部に違和感(熱感、かゆみ、ピリピリ感)を感じます。
【重要】 この段階で治療を始めると、症状を最小限に抑えられます。
第2段階:初期(赤く腫れる)
違和感があった場所が赤く腫れてきます。ウイルスの増殖が活発になっている時期です。
第3段階:極期(水ぶくれができる)
赤く腫れた上に、小さな水ぶくれが数個〜多数できます。水ぶくれの中にはウイルスが大量に含まれており、非常に感染力が高い状態です。
水ぶくれが破れると、患部がただれて痛みを伴います。
第4段階:回復期(かさぶたができる)
水ぶくれが乾いてかさぶたになります。かさぶたが自然に剥がれて治癒します。
無理に剥がすと跡が残るため注意が必要です。通常、発症から2週間程度で治ります。
なぜできる?再発の「引き金」とは
「昔かかったことがあるけれど、久しぶりに出た」という方が多いのが特徴です。
実は、ヘルペスウイルスは一度感染すると、完全に体内から消滅させることはできません。
普段は顔の神経(三叉神経節)の奥に潜伏しており(潜伏感染)、宿主である私たちの免疫力が低下したタイミングを見計らって暴れだします。これを「再起感染(再発)」と呼びます。
よくある再発のトリガー(引き金)
SEO的にも検索されやすい「原因」として、以下のようなものが挙げられます。
• 過労・睡眠不足:身体的な疲れが蓄積している時。
• 精神的ストレス:環境の変化やプレッシャーを感じている時。
• 風邪・発熱:「風邪の華(かぜのはな)」とも呼ばれるように、体調不良時に併発しやすいです。
• 強い紫外線:スキー場や海水浴、長時間の外出後など、紫外線のダメージがきっかけになることがあります。
• 歯科治療の刺激:お口を大きく開けたり、器具が触れたりする物理的刺激が誘因になることも稀にあります。
• ホルモンバランスの乱れ:月経前などに再発しやすい女性もいます。
他の人にうつる?感染予防のポイント
結論から言うと、口唇ヘルペスは非常に感染力が強いです。
特に水ぶくれができている時期は、接触感染のリスクが最も高まります。大切な家族やパートナーにうつさないために、以下の点に注意してください。
• タオルや食器の共用を避ける
ウイルスが付着したタオルやコップを通じて感染します。症状がある間は使い分けましょう。
患部を触らない
気になって触った指で、自分の目の周りや他の粘膜を触ると、そこに感染が広がる恐れがあります(角膜ヘルペスなど重症化することもあります)。
患部に薬を塗った後は、必ず石鹸で手を洗いましょう。
スキンシップを控える
キスや頬擦りなどは厳禁です。特に抵抗力の弱い赤ちゃんや高齢者との接触は避けてください。
歯科医院へ行くべき?予約がある時の対応
ここが歯科ブログとして最も重要なポイントです。
「口唇ヘルペスができている時、歯医者に行ってもいいですか?」という質問をよく頂きます。
基本的な回答:治療は延期(キャンセル)をお願いします
原則として、水ぶくれやかさぶたができている急性期の歯科治療は控えていただくことを強く推奨します。 理由は主に3つあります。
1. 患部が悪化するリスク
歯科治療ではお口を大きく開ける必要があります。その際、水ぶくれが破れたり、かさぶたが裂けて出血したりして、治りが遅くなる可能性が高いです。
2. 感染拡大のリスク
治療中、器具や歯科医師・衛生士の手袋が患部に触れることで、ウイルスがお口の中全体や、顔の他の部分に広がってしまう可能性があります。もちろん、歯科医院側も徹底した滅菌・消毒を行っていますが、他の患者様やスタッフへの感染リスクもゼロではありません(医療従事者が感染すると「ヘルペス性ひょう疽」という指の感染症になるリスクもあります)。
3.痛みが強い
単純に、患部が器具に触れると非常に痛いです。麻酔をする場合も、患部近くへの注射は困難です。
予約変更の電話をする際のポイント
「直前のキャンセルは申し訳ない…」と思われるかもしれませんが、ヘルペスは感染症ですので、遠慮なくご連絡ください。
「予約している〇〇ですが、口唇ヘルペスができてしまいました。うつる可能性があるため、予約を変更したいです」
と伝えていただければ、スムーズに対応いたします。症状が落ち着き、かさぶたが完全に乾いてから、または完治してからの受診をお勧めします。
※ただし、歯が激痛で眠れないなど、緊急性が高い場合はご相談ください。応急処置のみ対応する場合もあります。
5. 早く治すための治療法とセルフケア
口唇ヘルペスを早く治す鍵は、「ウイルスが増えきる前に対処すること」です。
医療機関での治療(皮膚科・内科・歯科)
口唇ヘルペスの治療薬(抗ウイルス薬)には、塗り薬と飲み薬があります。
• 抗ウイルス外用薬(軟膏・クリーム):初期〜水ぶくれの段階で有効です。
• 抗ウイルス内服薬(飲み薬):症状が重い場合や、再発を繰り返す場合に処方されます。
実は、歯科医院でも口唇ヘルペスの薬を処方できる場合があります。(※医院によりますので、事前にご確認ください)。口内炎だと思って受診したらヘルペスだった、というケースも多いため、診断も含めて相談可能です。
市販薬(OTC医薬品)の活用
過去に医師の診断を受けたことがあり、明らかに再発だとわかる場合は、薬局で薬剤師から「再発治療薬(軟膏)」を購入することができます。ピリピリとした予兆を感じた時点ですぐに塗るのが最も効果的です。
自分でできるケア
• 休養をとる:最大の薬は免疫力の回復です。睡眠時間を確保しましょう。
• ビタミンB群を摂取する:皮膚や粘膜の健康維持に役立つビタミンB2、B6(豚肉、うなぎ、卵、納豆など)を意識して摂りましょう。
• 患部を清潔に:優しく洗浄し、清潔を保ちます。アルコール消毒は刺激が強すぎるので避けてください。
似ているけれど違う病気?セルフチェック
「唇が荒れているけど、ヘルペスかどうかわからない」という場合、以下の病気との違いを確認してみてください。
| 特徴 | 口唇ヘルペス | 口角炎(こうかくえん) | 口内炎(アフタ性) |
| できる場所 | 唇、その周囲の皮膚 | 唇の端(口角) | 口の中の粘膜、歯茎 |
| 見た目 | 複数の小さな水ぶくれ | 亀裂、赤くただれる | 白くて丸い潰瘍 |
| 原因 | ウイルス感染 | 乾燥、ビタミン不足、カビ | 物理的刺激、免疫低下 |
| うつる? | うつる | うつらない(カンジダ性の場合は注意) | うつらない |
| 痛み | ピリピリ、チクチク | 口を開けると切れて痛い | 接触するとしみて痛い |
自己判断が難しい場合は、触らずに歯科医院や皮膚科を受診しましょう。

まとめ お口のトラブルは身体からのSOS
口唇ヘルペスは、身体が「疲れていますよ」「休んでください」とサインを送っている状態です。
無理をして仕事や家事を頑張りすぎてはいませんか?
もし症状が出たら、まずは身体を休めることを最優先にしてください。そして、歯科治療の予定がある場合は、ご自身の身体を守るためにも、遠慮なく予約の変更をご相談ください。
当院では、お口の中の虫歯や歯周病だけでなく、唇や粘膜の異常についてもご相談を承っております。「これってヘルペスかな?」「薬はもらえるかな?」と迷った時も、まずはお気軽にお問い合わせください。
皆様が健康な笑顔で過ごせるよう、スタッフ一同サポートさせていただきます。





















