「親知らずは痛くなければ抜かなくてもいいの?」
「抜くと腫れるって聞くけど、放置しても平気?」
――そんな疑問を持つ方は多いと思います。この記事では、歯科医の視点から“親知らずを放置するリスク”と“抜くべきタイミング”をわかりやすく解説します。
親知らずとは?まずは基本を整理
親知らず(智歯)は、20歳前後に一番奥に生えてくる永久歯のことです。上下左右に最大4本ありますが、現代人は顎が小さくなっているため、まっすぐ生えずに斜めや横向きに生えるケースが多いのが特徴です。
このため、「正常に生えて機能している親知らず」はむしろ少数派。多くの場合、歯ぐきの中に埋まっていたり、一部だけ顔を出していたりします。
痛みがなくても放置は危険?3つのリスク
① 隣の歯が虫歯・歯周病になる
横向きに生えた親知らずの周囲は、歯ブラシが届きにくく汚れが残りやすい部分。その結果、手前の第2大臼歯(奥から2番目の歯)が虫歯や歯周病になることがあります。この“隣の歯を巻き添えにする虫歯”は、治療が難しく抜歯になることもあります。
② 腫れや痛みを繰り返す(智歯周囲炎)
親知らずが半分だけ顔を出している状態では、歯ぐきとの間に汚れが入りやすく、炎症(智歯周囲炎)を起こします。一度治まっても再発を繰り返すことが多く、免疫が落ちたときや疲れたときに再燃する傾向があります。
③ 歯並びや噛み合わせへの影響
横向きや斜めに生える親知らずが、前方の歯を押すような力をかけることで歯列が乱れる場合もあります。矯正治療後に歯並びが崩れた…という人の中には、親知らずが原因のこともあります。
抜くタイミングの目安
親知らずを抜くべきかどうかは、「症状があるか」「将来的に問題を起こすか」で判断します。
◎ 抜いたほうがよいケース
・隣の歯に虫歯・歯周病の兆候がある
・智歯周囲炎を繰り返している
・横向き・斜め向きに埋まっている
・歯並び・噛み合わせに悪影響を与えている
・矯正治療を予定している
◎ 様子を見てもよいケース
・まっすぐ正常に生え、清掃が十分にできている
・完全に骨の中に埋まっており、将来的にも動く可能性が低い
・全身疾患などで抜歯のリスクが高い場合
ただし、“今は問題ない”場合でも、年齢が上がるほど抜歯が難しくなる傾向があります。20代のうちに抜く方が、回復も早く、合併症も少ないのが一般的です。
抜歯時の痛みや腫れはどのくらい?
親知らずの抜歯は、生え方や骨の深さによって難易度が大きく変わります。まっすぐ生えていれば通常の抜歯とほぼ同じですが、横向きに埋まっている場合は外科的な処置(歯ぐきを開く・骨を削る)が必要になることも。
術後の腫れは1〜3日でピークを迎え、1週間ほどで落ち着くのが一般的です。痛み止めや抗生物質が処方されるため、適切なアフターケアを行えば大きな問題になることは少ないでしょう。

抜歯後の注意点
1. 当日は強くうがいをしない(血の塊が取れると治りが遅れる)
2. 喫煙・飲酒は控える(治癒が遅れる)
3. 熱っぽさや強い腫れが続く場合は再受診
4. 2〜3日後までは柔らかい食事を心がける
抜歯当日の夜は「冷やしすぎない・触らない」が鉄則。痛みや腫れが強い場合は無理せず歯科医院に相談を。
まとめ:親知らずは「放置より予防的判断」が鍵
親知らずを放置しても、短期間では大きな問題が出ないこともあります。しかし、トラブルが起きてから抜くと治療が難航しやすいのが現実です。
将来の歯の健康を守るためには、症状がなくても定期的なレントゲンチェックを受け、「抜くか・残すか」を早めに相談することが最善です。
もし違和感があれば、痛みが出る前に一度歯科医院へ。早めの判断が、あなたの歯を長く守ることにつながります。





















